Bee フレンズ!
ミツバチと仲間たちの楽しい養蜂時間
第8回 岐阜県安八郡神戸町 友喜商事株式会社 西川康広さん
「(できるならば)巣箱の中に入ってミツバチの様子を見てみたい」「自分の家族のようなもの」―屈託のない笑顔で話す西川康広さん(56)は“ミツバチ愛”が半端じゃない。
切削工具の製造・販売業「友喜商事株式会社」の代表取締役として経営にいそしむなかで、こだわりを持って養蜂にも打ち込む姿は「ものづくり」に携わる人らしい。「どっぷりとつかる性格」を自認する西川さんがミツバチと送る生活とは?
興味を膨らませながら、取材をしてきました。
内検作業でミツバチの様子を見て、ほほ笑む西川さん
■なぜ養蜂を始めようと思ったのですか?
スイッチが入ってしまい…
少々恥ずかしい動機ですけど、きっかけはゴルフです。養蜂歴は約10年ですが、それよりも前から始めていたのがゴルフです。よく一緒にラウンドしていた友人2人がプレー中にもミツバチの話を楽しそうにするので、それを耳にするたびに気になって気になって… 2人に「自分もやりたい」と水を向けると、「かんたんにはできないぞ」と取り入ってもらえず、負けん気に火が付いてしまいました。周りの人が楽しいことをしていると、たまらないんです。
完全にスイッチが入ってしまいましたね。
女王バチには白色できれいなマーキングがされています
■養蜂をやってみて楽しさ、やりがいは?
ミツバチの話で喜んでもらえる
いっぱいありますよ。「働きバチは皆、メス」「農作物の生産にミツバチが授粉で貢献」「養蜂をするには法律に基づき、行政機関に届出が必要」―いろいろなことを知って、驚きの連続でした。
ミツバチの生態には神秘性もあって、魅力に引き込まれました。面白いから仕事の取引先のお客さんにもミツバチの話をすると、「え〜」と大きなリアクションをもらえ、お客さんとの距離が一気に縮まったことも楽しみでした。
採れたはちみつは瓶詰めにして、自作のラベルを貼ってお客さんやご近所さんにプレゼントしています。ラップで包み、心を込めて… 地産のはちみつとあって、皆さんにとても喜ばれるから、ますます力が入ります。
西川さんがお客さんらに贈呈するはちみつと、自社製品の切削工具、自分の使う遠心分離器用に作った歯車(左手前)
蜜源植物の大切さに気づく
ミツバチへの愛着が深まると、ミツバチのためにしてあげたいことを考えるようになりました。一つの答えが蜜源植物の増殖でした。現在、巣箱を会社の前にある約1000平方メートルの畑に置いていますが、畑には蜜源植物を計画的に植えてきました。今は蜜源としての約10種の樹木があります。ビービーツリーは4年前に植え、けっこうな樹勢になってきました。自慢はクリ(利平栗)の木です。これは自分が高校3年生の時に弟が植えたもの。約40年で幹回りは約120センチの立派な木になりました。畑真ん中の畝をつくったところには毎年レンゲの種をまいています。
ミツバチへの熱意に共感してもらってか、ご近所さんも蜜源植物を個々の庭などに植えてくださり、うれしいですね。ミツバチを飼うようになってからは、クリをはじめ実のなりが良くなったと感じます。
西川さんが植えた蜜源植物が根を張る畑。ミツバチたちは大喜びです!
見事に成長したクリの木にも愛情を注ぐ西川さん。秋には多くの実がなるという。
ものづくりの心が刺激されて
ものづくりの活動に目を向けてもらい、(株)秋田屋本店からの依頼で、現在、遠心分離器(ポーランド・LYSON社製)の蜜口部のふたの製造をしています。自分でかたどりをして、接合部分の強度に注意しながら作業がしやすい最適な厚さを考えて設計しました。ステンレス板を工作機械(マシニングセンタ)で加工し、製作しています。「蜜切れが良い」と評価をいただいています。ものづくりは何でも楽しいと実感していて、他の養蜂器具も作ってみたいと思っています。
工場に入り、「ものづくり」への思いを熱く語る西川さん
次々に完成する蜜口部のステンレス製ふた
■養蜂をやる上で大変なこと、苦労した点は何ですか?
ミツバチが大切だから、巣箱周りもきれいに
最初の年は冬越しで見事に失敗し、群れが全滅しました。翌年、種蜂群を手に入れて再スタートしましたが、次はダニに苦労しました。振り返れば、冬越しがどうにかできて、まともな養蜂になってきたのは始めてから4年後ぐらいでしょうか。
その後、分蜂なども経験して、増群できるようになりました。苦労の末にというわけではありませんが、こだわりの一つとして巣箱周りもきっちりと仕上げています。巣箱の屋根にプラ板を置いていますが、木の角棒を組んで敷き、プラ板に傾斜を付けています。雨水を溜めずに流下させるためです。また、藤のすだれを敢えて巣箱の片側に掛けています。これは強い西日対策です。
ミツバチのことを考えていると、いろいろな工夫が自然と湧いてきます。
巣箱は等間隔に置かれ、1箱1箱をきっちりと仕上げている。清掃が行き届いた美しい蜂場。
巣箱のふたの上に置かれた木の角棒がポイント。
傾斜が付けてあり、雨水が溜まらずに流れ落ちる。
■今後の目標を教えてください!
奥が深いから、ずっと続けたい
巣箱が置いてある畑を「ハチの公園」にしたい。公園と言うと、驚かれてしまいますが、蜜源植物に囲まれて、ミツバチと気軽に触れられる空間をつくりたいのです。そして、四季の移ろいを畑から伝えたい。
敷地内にウッドハウスを巣箱型にして建てて、ミツバチになった気分で休憩スペースをつくり、室内にはミツバチと巣箱を被写体にした写真パネルを飾りたいですね。春はサクラ吹雪が舞い、夏はクワガタムシなど他の昆虫も這いずる。秋はクリのいががいっぱい落ち、冬は雪をかぶって真っ白に…四季の移ろいとともに変化する情景を見せたいなって。やりたいですね。養蜂は自分が生きている限り、続けていきます。
奥の深いことが分かっているから、少しでも長く続けて「ミツバチ道」を追い求めていきたいのです。
2021年8月取材