Bee フレンズ!
ミツバチと仲間たちの楽しい養蜂時間
第4回 愛知県名古屋市 NPO法人 マルハチ・プロジェクトの皆さん

マルハチ・プロジェクト 松良さん
前回の取材では、JR岐阜駅近くの街中の養蜂場をご紹介しましたが、今日はさらに都会にやってきました!
ここは、名古屋市の繁華街、錦3丁目。オフィスビルやお店が立ち並ぶ都会の一角です。周りに民家は見当たりません・・・もちろん、田んぼや畑も・・・。今日の取材先は、この大きな通りに面した9階建てのビルの屋上で、都会派養蜂を実践されている養蜂場。

このような都会にミツバチが暮らしているとは驚きです。そして、蜜源となる植物はどこに?様々な疑問を抱きつつ、養蜂場に到着!
「ミツバチから考える環境づくり。」をキャッチフレーズに活動されているNPO法人マルハチ・プロジェクトさんが今日の取材先です。養蜂プロデューサーの松良さんに都会派ミツバチの様子を見せていただきました。同じくマルハチ・プロジェクトの大畑さんのお話も交えてお届けします!

都会のど真ん中!きらきらガラス張り。このビルの屋上にミツバチが住むという・・・
■なぜ養蜂を始めようと思ったのですか?
農薬からミツバチを守るには?都会派養蜂の可能性
COP10(生物多様性条約国第10回国際会議)が名古屋で開催された2010年を契機に、生物サービスをもっともわかりやすく示してくれるミツバチを飼育することを思いつきました。
都会のビルの屋上での養蜂を選んだきっかけとなったことはいくつかあります。そのとき既に、アメリカなどで問題となっていた蜂群崩壊症候群(CCD)の原因のひとつと疑われていたのが農薬でした。そして、その農薬の被害を受けにくい都会のビルの屋上での養蜂を、東京の銀座で実践されていた「銀座ミツバチプロジェクト」がありました。
東京出張の際に訪問し教えを乞い、名古屋でも実現可能だと思い始めました。

ビルの屋上にありました!大切に管理されている巣箱です。

いました!9階建てビルの屋上に住むミツバチたちです。元気です!
■養蜂をやってみて楽しさ、やりがいは?
こどもたちへの環境教育も大事なミッション。
蜂を飼い始めて、その神秘さ、愛らしさ、奥深さなど楽しさに満ち溢れていると感じました。
採蜜の喜びも大きいですが、数を増やして、新女王を誕生させ、群を増やしたときはとても達成感がありました。もちろん今でも。
志を同じくする仲間が増えて、NPOとして名古屋市に認定されたことも喜びでした。
また、環境教育、啓蒙も大切なミッションなので、イベント等でミツバチの知識や理解が進み、誤解が解けたりしたときもやりがいを感じるときのひとつです。
特に、こどもたちの興味に火が付いて、目を輝かせてくれるときは至福です。
その際、ハチミツの頒布も行うのですが、考え方、味に納得していただいて買い求めていただき、それが売り切れるとき、満足感があります。
マルハチ・プロジェクトは現在5名で活動しています。ホームページを見てコンセプトに賛同し、参加してくれたメンバーもいます。ミツロウを使ってキャンドルを作るアーティストや会社員などメンバーの背景は様々です。

キラキラ光る蜜が見えます。女王を育てる「王台」もできていますね!
都会の養蜂場ですが、蜜源は多種多様です。ミツバチたちは、官公庁の建物が立ち並ぶ名古屋城の周辺まで飛んでいき、ユリノキの蜜も採ってきてくれます。とてもキレイな薄い色の蜜で味もおいしいです。ユリノキは蜜が豊富で、初夏に花が咲くと蜜が花からこぼれ落ちるほどです。全国の街路樹や公園樹として植えられているので都会での養蜂の場合、重要な蜜源になると思います。この他は、このあたりの街路樹になっている桜や百日紅(さるすべり)の花も貴重な蜜源です。

ビルの近くの公園には、蜜源になるモチノキが咲いていました。
■養蜂をやる上で大変なこと、苦労した点は何ですか?
都会派養蜂は、“天敵”と“分蜂”との戦い
地面の上で飼育したことが無いのでなんともいえませんが、初めは夏の暑さを危惧していたのが、実は冬の寒さのほうが深刻で、冷え切ったコンクリートは生き物には厳しいということを思い知らされました。すなわち、越冬の難しさです。それと、採蜜のシーズンの屋上作業は、日陰がない分つらいものがあります。
また、スムシの生命力の強さ、手ごわさにも辟易としました。毎年というわけではありませんが、スズメバチの襲来も都会の割にはあります。
分蜂した群をうまく巣箱に誘導できるかどうかも、都会養蜂では大切なポイントです。以前、分蜂したときにはこの屋上の看板の裏に集まっていたのですぐに巣箱に誘導しましたが、別のビルに飛んでいったり、人目につく繁華街まで飛んでいってしまうと、苦情が出たり、駆除されてしまう危険もありますので気をつけたいところです。
NPOの運営上の問題点には十分に採蜜が出来ていないことがあります。
シーズンのピークに人手が足らず蜜を無駄にしているということがあります。

ミツバチがつくる巣は、神秘的な美しさ。
■今後の目標を教えてください!
ミツバチを通して、自然環境の危機への意識を高めたい
今後は、市民の参加をもっと図っていきたいと思っています。
特に、こどもたちとその親への啓蒙は、環境の変化を受けてしまう世代の危機回避のための意識と知識を高めてもらうきっかけ、手段として重要だと考えているからです。
そのために、単独ではなく他の同様の志のある団体と連携していくことも進めていかなければならないと思っています。
これは、作業をしてくれる人を増やしていくことにもつながると期待するところです。

2018年5月18日取材